環境デザインによる防犯(CPTED)
Crime Prevention Through Environmental Design
環境デザインによる防犯とは、Jane Jacobs, Ray Jeffrey, Oscar Newmanなどによって提唱された、物理的設計・デザインによって「最終的に」環境における犯罪を防止、抑止するという概念であり、手法である。
この「最終的に」を強調したのは、物理的な環境が直接的に犯罪を抑止する、たとえば堅固な鍵を付けてしまう、というような方法のほかに、設計やデザインが住人や利用者の意識や行動を変化させ、その変化した意識や行動が犯罪の抑止抑止として働くことがあるからである。そして、CPTEDのなかでは、その後者の心理メカニズムを媒介とする抑止の重要性が高いからである。
物理的な抑止手段としては1)対象の強化と2)アクセスの統制が挙げられる。対象の強化とは、堅固な鍵を付ける、高い塀を建てる、ガードマンを付けるなどであり、2)アクセスの強化とは、立ち入り禁止区域を設ける、IDカードで出入りを管理する、警備員のいる受付を設けるなどである。アクセスの統制は、直接的に潜在的な犯罪者を排除する効果に加えて、犯罪者に事前の計画を立てさせにくくするという効果もある。
心理メカニズムを媒介とする方法としては、1)自然監視の確保と2)領域性の確保が挙げられる。
自然監視とは、住人、利用者、通行者などの目が自然にあること(つまり見ていること)で、その場所の犯罪を抑止することである。犯罪者が人目を気にして犯行を控えるという意味では物理的な抑止に近いが、この自然監視が本当に機能するためには心理メカニズムも必要とされる。つまり、その場に潜在的な犯罪者がいたとしても、その者に犯意があることを確認し、またそれをとがめるという行動を促す装置が必要なのである。それが、領域性の確保である。
領域性の確保とは、環境を特定の個人・集団に帰属させることである。たとえば、玄関前の空間に何もしておかなければ、それは道路という公共の空間の一部とみなされ、見知らぬ他者がうろついたとしても、実際ふと紛れ込んでしまったかも知れず、とがめることは難しい。しかし、ここに芝生を植える、レンガを埋め込む、低いフェンスを付ける、生垣を作るなどすれば、その範囲は明らかに住人の支配する場所(領域)となり、そこに踏む込む者には踏み込む意思があると見なし、とがめることが可能である。このように、公共の空間に見える場所を、誰か所有、所属していると分からせる工夫、装置を領域性の確保という。Newmanの用語では、象徴的障壁に相当する。そして、この領域を確保することで、住人はさらに環境に対する愛着を深め、防犯の意識、姿勢を強くするという効果も生まれる。
現在ぼくは駅におけるCPTEDの研究を行っている。