犯罪不安

Fear of Crime

潜在的な被害者にとって空間行動を決定する要素のひとつが犯罪に対する不安である。英語ではFear of Crimeと呼ばれており、そのまま訳すならば犯罪恐怖となるが、一般的には犯罪不安の訳語が当てられている。

「自分が犯罪の被害者になることに対する不安」にもいくつかの違う側面や要素が含まれている。まず、この中には犯罪に遭遇する確率をどの程度に見積もっているかという「リスク確率の認知」と、犯罪に遭ってしまった際にどのくらいの損害を受けるかを判断する「ダメージの見積もり」の要素が含まれている。また、実際に犯罪に遭遇した場合に、自分がそれから逃れたり、ダメージを受けないように対応できる能力や確信があるかという「対処の能力の自己評価」も不安感に影響を与えており、「対処の能力の自己評価」が高い場合には犯罪不安は減少する。

また、犯罪不安は、場所を特定せずしない全般的犯罪不安と、特定の場所に対する状況依存的犯罪不安に分けることができる。全般的犯罪不安とは、漠然とした犯罪に対する不安であり、社会情勢や体感治安などに大きな影響を受ける。一方、状況依存的犯罪不安は、物理的環境の持つ特性に対する恐怖感を反映する部分が大きい。

犯罪不安の研究は、1)個人のレベルとして犯罪不安を捉えているか、2)コミュニティにおけるダイナミズムの問題として犯罪不安を扱っているかに分類することも可能である。前者を心理的アプローチ、後者は生態学的アプローチといわれている。心理的アプローチの研究では、1)いつ、何が犯罪不安を引き起こすかという環境の問題と 2)なぜ、どのような犯罪不安は起こるのかという心理的メカニズムを研究対象としている。一方で、生態学的アプローチの研究では、犯罪不安はコミュニティに何を引き起こすのかを検討する。つまり、犯罪不安が社会的統制、ストリートライフ、犯罪発生率、近隣の構造などに何をもたらすのかを研究してきた。

僕自身がかかわってきた研究は、「どんな物理的環境が不安を喚起するか」「犯罪不安にはどんな次元があるのか」「個人の犯罪不安を包括的に捉えるとどんな関係が考えられるか」などである。

舟生真奈美・羽生和紀 (2003,9) 包括的犯罪不安モデルの実証的検討.犯罪心理学研究, 41(特別号), 160.

舟生真奈美・三輪佳子・羽生和紀 (2003.9) 新しい犯罪不安尺度の作成:信頼性と妥当性の検討. 日本心理学会第67回大会発表論文集, 347.

Funyu, M.,& Hanyu, K.(2003,5). Fear of different crimes in different types of areas in a city. EDRA Proceedings, 34. 220.

小野寺理江・羽生和紀 (2001,11) 犯罪に対する不安を喚起する環境要因の検討. 日本心理学会第65回大会発表論文集, 1053.

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